男性機能障害の医療現場の現状

男性性機能障害の医療現場の実情について、触れておきたいと思います。

数年前に、藤原紀香さん主演の『ギネ産婦人科の女たち」というテレビドラマが放映されたのをご記憶でしょうか。

産婦人科医の置かれた厳しい現実を告発する社会派ドラマでしたが、この「ギネ」は「ガイネコロジー」すなわち「婦人科」を略した、いわば業界用語みたいなもの。

何が言いたいのかというと、このように、女性には婦人科があります。

そこで女性特有の疾病や不妊症、更年期障害、性機能障害まで総合的に診てもらえるわけですね。

それに比べると男性に関する研究は一O年遅れている、というのが私の認識なのです

アンドロロジーって?

「ガイネコロジー」に対応する用語に、「アンドロロジー」があります。

アンドロゲンという男性ホルモンに関する学問、要は「男性学」です。

でも、その知名度は、ポピュラーな婦人科に比べるべくもありません。男性患者を扱うことが多い泌尿器科医でも知らない人がいるのでは、と思えるほど。

かく言う私自身、不妊や勃起、射精の分野に踏み込まなければ、『アンドロロジー』って何?という状態のままだったかもしれません。

そもそも、婦人科はあっても、「男性科」は、ごく限られた病院にしかありません。

婦人科の診療に対応する男性不妊症とか性機能障害、男性更年期障害などを主として扱うのは、われわれ泌尿器科ということになっています。

しかし、泌尿器科というところは腎臓や膀胱の、例えばがんや結石といった様々な病気、性器に関しては感染症などがメインで、生殖機能そのものに関わっているわれわれのような医師は、その中のごく一部に過ぎません。

婦人科とは、知名度だけではなく、医療の体制そのものに雲泥の差があるのです。

しかも、その差を埋める方向に状況が改善されつつあるならまだしも、男性学は逆に徐々に「後退」している感が否めない現実に、私は危機感を覚えています。

後退する男性学部門

例えば、男性学を研究する「日本アンドロロジー学会」という団体の会合に、私は毎年、出席しています。

そこでは、精子形成、性分化から男性更年期障害、男性性機能障害、前立腺がんまで、有意義で幅広い発表が行われるのですが、近年は肝心の学会員数が減少の一途をたどっているのです。

泌尿器科の中でアンドロロジーに関わる医師はごくわずかと言いましたが、この分野でという現実もあります。

今後、泌尿器科では、教授になる人がほとんどいなくなっている、がんをやった人しか教授になれないだろう、とも噂されています。

すなわち、日本国内における男性性機能障害などの研究のすそ野が、どんどん狭まっているわけですね。

なぜ、こんな事態になっているのか? 社会的に見れば、それはレディースデーや女性専用車両はあってもその逆はない、という現象と軌を一にするものなのかもしれません。

やや自虐的な言い方をすれば、「男性軽視」。

EDには特効薬ができたし、オトコにはもう「市場」がない

しかし、まだまだ認知度の低い射精障害の問題一つとっても、そんなことはないことが分かるはず。

少子化問題にしても、「対策」は女性に目が行きがちです。

もちろんそれは欠かせないのですが、不妊の現場を知る医者の立場から言わせてもらえば、男の体、その機能にも、もっと関心を持っていただきたいと痛感するのです。

繰り返しになりますが、子作りは男女の共同作業なのだから。