顕在化する射精障害

オトコの「働き」が問題となるのが「男性性機能障害」で、これには二種類あります。

勃起障害と射精障害です。

平たく言えば、勃たせようと思っても勃たないのが前者、

出したくても出せないのが後者。

症状や原因は重なり合う部分もあるのですが、この両者はきちんと分けて考え、対処することが非常に大事だ、と私は感じています。

女性にも性障害はある?

ちなみに、女性にも性機能障害はあります。

最も多いのは「性交痛」。臆内の潤滑が不足することなどが原因(潤滑不全)で、硬いペニスを受け入れようとすると痛くてたまらない。

セックスレスを招くことが、多くあります。

ワギニスムス、俗に言う膣痙攣も女性の性機能障害です。

膣痙攣と聞くと、行為の最中に突然チンチンが締め付けられて抜けなくなっちゃった、という半分笑い話で語られる場合が多いかと思われますが、実際は異なります。

ワニギスムスとは、入れようと思っても到底入らないほど睦の内部が固まってしまう、という症状です。

他に広い意味では、男女共通の性機能障害として、性欲障害も含まれます。

深刻なED事情

男性に話を戻すと、日本人の勃起障害の有病患者数は、中程度ED(時々、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる)が八七O万人、完全ED(毎回、性交に十分な勃起が得られない。また、維持もできない)が二六O万人の、合わせて約1130万人に上るという、疫学調査を基にした推計があります(日本性機能学会「ED診療ガイドライン』) 。

EDが1OOO万人超というのは、ちょっとバカにできない数字です。

しかも、この調査は一九九八年に行われたものですから、人口の高齢化に伴い、実際の患者数自体はこれより大きく増加している可能性が高いものと思われます

ただいかんともしがたかった不知意(勃起障害)には救世主が現れました。「パイアグラ」「レビトラ」「シアリス」といった勃起改善薬です。

これらの投薬治療が可能になったことで、多くのED患者さんが勃起を取り戻せるようになりました。

勃起障害よりも深刻??射精障害の実情

これに対して、相対的に深刻になっているのが、実は射精障害なのです。

「勃起するのに射精までイケない」という症状自体、初耳だという方が少なくないでしょう。

でも図1を見て下さい。これは、泌尿器科の私のボスである岡田弘先生の元を訪れた初診の患者さんの数です。

射精障害の患者さんが、一九九八年頃から急増しているのが見て取れます。

何かの原因で患者自体が増えた、とは考えにくいと思います。

そうではなくて、潜在的勃起障害(ED)だけではない「男性性機能障害」にこの症状を抱えていた人たちが表に出てきたのだ、と見るのが自然でしょう。

「バイアグラ」が日本で発売されたのは九九年でした。

とにかく「アレに効く」と評判の薬は発売以前からブームの様相を見せていて、すでに米固などで売られていた薬を輸入し、飲む人もたくさんいました。

すなわち、勃起障害は「不治の病」ではないことが確認できEDの陰に隠れていた(EDと混同されていた)射精障害があぶり出された。

その結果顕在化したのではないか、と推測されるのです。

いずれにせよ、私のところにいらっしゃる男性性機能障害の患者さんは、勃起障害に比べ圧倒的に射精障害が多いのが現状です。

それは、私の外来が性機能というよりは、不妊症としての外来であるというのが原因とも考えています。

しかし、私の外来に訪れるのは、「妊娠を希望している」「結婚した後の」カップルが多いのです。

つまり、現在は未婚であり、それほど困っていない男性、一O代半ばで射精障害の原因となる間違ったオナニーを始めたばかりの男性など、予備軍はたくさんいると考えられます。

射精障害に関しては、それだけたくさんの男性が、EDのような明確な治療法も見出せぬまま苦しんでいるということになるのです。